墨田区の住宅街の一角
東向島は墨田区の北部に位置し、東武スカイツリーラインで浅草から数駅北にあります。ほとんどの旅行者が訪れることのない街で、観光とは無縁の日常生活が密集した住宅街の路地に広がっています。玄関先に鉢植えがひしめく小さな家々が、車一台がやっと通れるほどの狭い路地に並んでいます。お年寄りの住民が何十年も同じ店構えを守る個人商店の主人とおしゃべりしている。ここにはせかされる感覚がなく、東京がひたすら近代化を進める以前の空気が漂っています。ガイドブックの定番コース以外に興味がある旅行者にとって、東向島はゆっくり観察しながら歩くことで報われる街です。
建築の個性
東向島を視覚的に際立たせているのは、その建築の多様性です。戦後にすべてがコンクリートで再建された街と異なり、ここには古い木造建築が残っています。引き戸、瓦屋根、格子越しに見える小さな庭を持つ二階建ての家屋です。これらが戦後のアパート群や時折見かける現代的な建物と並び、何十年もの少しずつの変化を記録した重層的な街並みを生み出しています。昭和初期の建築の特徴を残す家もあります。狭い間口、窓越しに見える急な階段、読めなくなるほど褪せた手書きの看板。建築愛好家はここで一街区ごとに、東京のもっと有名な街よりも豊かな変化に出会うでしょう。それは東向島が大規模再開発の波を受けていないからこそです。
地域の暮らしとコミュニティの催し
東向島のリズムを作っているのは、訪問者ではなく住民たちです。朝には商店主が歩道を掃く音、狭い角を器用に曲がる配達トラックの姿があります。小さな商店街が地域の日常を支え、魚屋、米屋、豆腐屋、時には百年以上続く和菓子屋が軒を連ねています。地元の祭りが四季を彩り、町内会が夏の盆踊りや秋の祭りを企画し、普段は静かな通りが一時的に提灯、太鼓、屋台で活気づきます。これらのイベントは住民のために住民が運営しているものであり、大規模な観光客向けの祭りにはない本物の空気感があります。参加は歓迎され、温かく迎え入れてもらえます。
東京スカイツリーへの近さ
静かな住宅街でありながら、東向島は東京を代表するランドマークのすぐ近くにあります。高さ634メートルの電波塔・展望台である東京スカイツリーは、界隈の多くの通りから低い屋根越しにそのシルエットを望むことができます。東向島からスカイツリーの麓まで歩くと約20分で、古い下町の住宅街からタワー周辺の商業ゾーンへと徐々に景色が変わっていきます。このコントラスト自体が魅力のひとつです。1970年代の東京のような街で朝を始め、電車に乗ることなく21世紀の象徴で朝を締めくくることができるのです。
下町の風情
東向島は、東東京の商人、職人、庶民が何世紀にもわたって暮らしてきた「下町」と呼ばれる文化圏に属しています。下町の街にはいくつかの共通する特質があります。人付き合いの率直さ、気取りのなさ、地域の伝統への深い愛着、そして隣人との親密さを否応なしに生む物理的な密集度。東向島はこうした特質を自然体で備えています。その魅力を宣伝する看板もなければ、企画された散策ツアーもなく、「下町チック」を売りにするカフェもありません。代わりにあるのは、ありのままの姿でいる街――穏やかに年を重ね、自分のリズムを守り、旅行者に「人がただ暮らしている東京」を見せてくれる稀有な体験です。最寄り駅は東武スカイツリーラインの東向島駅で、浅草からわずか2駅です。